年利回り7%の不動産投資型クラウドファンディングを分析

⑦資産運用

ネット広告やテレビCMで見かける、年利回り7%、開始以来元本割れ無しという不動産投資型のクラウドファンディングに、出資してもよいのかを検討します。

金融機関で融資を受けると1%前後で資金を調達できるのに、わざわざ7%の負担をして大衆からお金を集めようとしていることや、金利が上がりそうな気配があるとは言え未だ超低金利の状況で7%の利回りを出し続けるのなら、黙っていてもその情報はSNSやYoutubeで拡散され資金は集まりそうなのに、テレビや新聞で広告を出して続けていることから、新しい出資を集め続けないと成り立たない危ない仕組みなのかもしれないので慎重に検討してみます。

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仕組み

まずは、複数あるファンドの1つのお金の流れ・仕組み図です。

不動産特定共同事業法に基づき運用されている不動産ファンドです。

約28億円を投資して、商業施設13,000坪の一部である9.5%の所有権を取得。
優先出資79.8%、劣後出資20.2%で、優先出資が募集されています。
優先出資の配当率は7%となっていますが、この配当率が保証されているわけではありません。超低金利状態は続いていて、1%前後で資金が調達できる状況下で、7%の金利をわざわざ払って資金調達をしているということになります。

賃貸想定利益は、約2.2億円とされており、総投資額の約7%に相当します。

入居者は、植物研究・生産事業を行う法人ですが、営業者の代表者と入居者の代表者は同一人物です。他のファンドも、投資物件への入居者は同一人物が代表を務める別法人のようです。

上の図では、営業者関連を黄色で色分けしています。

このファンドの毎回の配当は2カ月に1度、9,000円前後(出資額100万円あたり)です。出資額の7%の日割り分が配当額となっており、運用期間は5年前後。このファンドは5年に設定されており、5年間30回の配当で受け取れるのは、27万円です。期間終了時には元本を償還してもらえるようですが、そのまま延長や他のファンドに誘導されて、続ける人もいるのだと思います。

途中償還は、営業者に買取希望の場合は3%+税の手数料、
第3者に譲渡の場合は、1%の手数料。クーリングオフもあります。それまでの配当と償還された元本で手数料を引かれてもプラスになったという報告をしているブログもあるので、今のところは償還に応じてもらえそうです。

家賃:かなり高い

賃貸想定利益が総投資額の7%とだけ記載されています。管理費用等が開示されていないなど不透明な部分が多いので、ざっくりと試算してみたいと思います。

管理費用等の営業費用は固定資産税、火災保険などで家賃収入に対して10%程度だと仮定して、営業報酬が最大3%+税となっているので、家賃は2.5億以上はあると思われます。

年間家賃2.5億円を月当たりの坪単価にすると1.69万円です。

福岡県の家賃相場は、倉庫・工場施設の坪単価は3千円前後(小倉で2,800円~3,200円、直方1,500円~1,800円)、商業施設で5-8千円程度。大型商業施設の福岡県平均は1.61万円です。坪1.69万円は、工場の家賃としてはかなり高いです。

また、家賃の負担割合から事業規模を推測してみると、農業加工等の平均販管費率は13%、製造業は20%(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keiei_sihyou/h11/07_b1.html)です。

販管費が家賃のみだとしても、売上高は185億円が必要ということになります。20%なら120億円の売上です。実際には人件費や水光熱などもあるので、さらに売上は大きくなるはずです。

120万株あるそうで、1,000万株まで増産できるそうです。1つの株から10房、1房当たり15本だとすると、

10房×15本×120万株×年2回=360,000,000個(3.6億個)のバナナがなるようです。

1本当たり100円で全て売り切れば、年間の売上は360億円となるので、家賃の支払いは問題ありません。

1房15本で2キロだとすると、重さにすると、2キロ×10房×120万株×年2回=24,000,000キロ(24,000トン)です。

日本のバナナ生産量が、全国で113トンで、4分の3が沖縄県、4分の1が鹿児島県だそうです。日本全体の200倍の生産量です。一般のバナナとは、量も重さも違い、常識でははかれない育て方をしているのかもしれません。

もう1つ気になるのは、1,238坪の建物内に120万株育てられているという点です。この面積で120万本を植えると、一本当たり0.001坪(0.0033㎡)33平方センチメートル(6㎝×5.5㎝)に敷き詰めなくてはならず、実を収穫できるとは思えません。

例えば、高さも使って10段くらいに植えてみたら、1本当たり0.033㎡になります。330平方センチメートル(16.5㎝×20㎝くらい)。収穫が大変そうです。

バナナの木576本

そもそも周辺にもっと安い施設があるのに、これだけ高い家賃を負担してまで、利便性が高いとも言えないこの場所にこだわる合理的な理由があるのかもしれませんがわかりません。売上も家賃もあり得ない金額ではないけど、規模・立地を考慮すると維持していくのは難しいように感じます。

また、建物内がどのようになっているのかわからないので、投資するなら現地視察はしておくべきだと思います。

追伸:その後の想定利益が1億円ほど追加されていました。募集金額も増えています。集めたい金額に合わせて設定した家賃にしか見えません。

取得価格:高すぎる。

入居者の経営状況、家賃が固いなら、取得価格も高いのでしょうが、
REITに組み入れられている物件を、株式会社ICHIさんのポートフォリオマップを使って
用途は異なりますが、規模の比較的近い物件と比べてみることにしました。

REIT組み入れ物件の1万坪前後の評価額とCap rate

このファンドは、

13,000坪×2/21=1238坪≒4,085㎡、取得価格:28.6億円、NCF:220,000,000円

価額を延床面積で割った㎡単価は、約70万円です。REITの物件の㎡単価はおよそ15万円~20万円です。

運営会社と入居者の代表者が同一ということだけでも怪しいのに、REIT物件と比べて、異常に高いです。そのあとにも追加募集が行われており、これが不足分を補うためなのか、新たに持分を増やすためなのかもよくわかりません。

営業者の財務諸表

営業者の貸借対照表のみがホームページ上で公告されています。直近の貸借対照表から読み取れるポイントです。

流動負債257億円に対して、現金預金が45億円。危うい。

流動負債257億円のうち35億円は、借入金返済や出資金償還だが、約210億円は預り金。怪しい。

この1年間で受け入れた出資金は371億円。増加した不動産は494億円。

差額123億円あるが、謎の預り金が112億円、利益が17億、現金5億(減少)あたりでカバー。(借入金は4億円減少、減価償却は6.6億円)

 

以下、このファンドについて、まとめと憶測です。

元の投資物件をこの経営者(別の法人)が安い値段で仕入れて、これを営業者(個人投資家たちが出資)に高い値段で転売。テナントには、この経営者(別の法人)を入居させ、家賃を営業者に支払っている。入居者としてしっかり利益出せないと、最初に回収した不動産売却資金は削れていくが、7%の利益にするために設定家賃高くしているので大変。新たな物件と出資金を集めてしのいでいるよう。よくわからない預り金が200億近くもあり、資金回っていないのだとしたら、入居者の質上げるとか、優先利回り下げないとそろそろ危ないのではないかと思います。

謎の預り金は、出資者が終了期間わからなくなったものを、しれっと延長している分とかなんでしょうか。配当出さなくなれば、出資者たちも気付くだろうし、配当払っているなら、受入出資金勘定のままで良いと思うので、やはりこの預り金はよくわからないお金です。

おわりに

1口100万円と安い投資ではないので、念には念を入れて調査しましょう。

リターン狙うならリスクはつきものですので、REITなら絶対安全かというとそうではないわけです。流動性が高い分、値動きは大きくなります。だから、このファンドのよくわからない点もリスクとして受け入れるのであれば、それも1つの判断の仕方だと思います。

このファンドについては今回気付いただけでもよくわからない数字がいくつかありました。わからない部分を自分の都合のいいように希望的な解釈をして曖昧なまま投資を強行し、それが致命傷になることがあります。

不明な点、わからない点は、必ず徹底的に調べた上で納得してからお金を出す・ハンコをつくようにしてくださいね。

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家計見直し・資産管理| かんぎフィナンシャル
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