お金で後悔した人たちに共通していた「12の思い込み」

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お金の相談を受けていると、「あ、またこのパターンだ」と思う瞬間がある。

損をした人、騙された人、老後が不安になった人。話を聞いていくと、問題の根っこにはたいてい同じ「思い込み」がある。悪い人が騙したというより、その思い込みがあったから騙されやすかった、という構造だ。

これは他人事じゃない。私自身も、気づかないうちに同じ思い込みを持っていたことがある。

10個並べてみた。読みながら「あ、自分もそう思ってた」と感じるものがあれば、それが今日一番の収穫になるかもしれない。


思い込み①「保険で節税・貯蓄ができる」

「節税になりますよ」「貯蓄代わりになりますよ」という説明で保険に入った人は多い。

確かに嘘ではない。でも、前提条件が省かれている

節税効果が出るのは、払った保険料が控除の枠に収まる場合だけだ。何十万円も払っても、節税額は数千円〜数万円というケースがほとんど。それ以上の保険料を払うのは「節税」ではなく「支出」だ。

貯蓄性保険も同様で、途中解約すると元本割れする商品が多い。「貯蓄代わり」として機能するのは、何十年も払い続けて、予定通りに満期を迎えた場合だけ。

保険は「もしもの時の保障」を買うものだ。節税や貯蓄の手段として売られているとき、何かが省かれていないか確認してほしい。


思い込み②「不動産投資は年金になる・損しても節税になる」

「家賃収入で年金代わりになります」「赤字が出ても節税できます」という説明でワンルームマンションを買った人を、何人も見てきた。

年金になるかどうかは、空室リスク・修繕費・ローン返済を全部引いた後に手元に残るかどうかで決まる。説明では都合のいい数字しか並ばないことが多い。

節税については、赤字=手出しが増えるということだ。100万円の赤字で30万円節税できても、70万円は出ていく。節税のために損をし続けるのは、本末転倒だ。

不動産投資が悪いわけじゃない。でも「年金になる」「節税になる」という言葉だけで動くのは危険だ。


思い込み③「○%の利回りで元本保証の投資がある」

「年利10%保証」「元本は絶対に守られます」という話が、今も後を絶たない。

断言する。利回りと元本保証は、普通は両立しない。

銀行預金は元本が保証されているが、利息はほぼゼロだ。利回りが高い商品はそれだけリスクがある。これは金融の基本中の基本で、例外はほとんどない。

「でも実績があります」「特別なルートがあります」という説明が来たら、詐欺を疑っていい。最近続いている投資詐欺の多くが、この思い込みにつけ込んでいる。


思い込み④「知人・信頼できる人の紹介だから大丈夫」

これが、実は一番危ない思い込みかもしれない。

詐欺や不適切な勧誘は、見知らぬ人からは来ない。友人、知人、親戚、昔からの担当者——信頼関係がある人から来る。だから判断力が落ちる。

「あの人が勧めるなら大丈夫だろう」という気持ちはわかる。でも紹介した人が詐欺師とは知らなかった、ということもあるし、長年の付き合いがある営業員が、知らないうちに自分に不利な商品を売っていた、ということも珍しくない。

信頼できる人からの紹介であっても、内容を第三者に確認するという習慣が必要だ。「失礼かな」と思わなくていい。大事なお金のことだから。


思い込み⑤「日本人の2人に1人はがんになるから、手厚い保険が必要」

この数字は本当だ。でも、その後に続く「だから手厚い保険が必要」は、別の話だ。

まず、がんになる確率は年齢によって全然違う。若いうちはかなり低い。そして、日本の公的医療保険はかなり手厚い。高額療養費制度を使えば、月の自己負担には上限がある。

「がんになったら○○万円かかる」という数字は、公的保険を使わなかった場合や、先進医療を受けた場合の話が多い。普通の治療なら、思ったほどかからないケースがほとんどだ。

不安を数字で煽るのは、保険を売る側にとって有効な手法だ。数字を見たら「どういう前提の数字か」を確認する癖をつけてほしい。


思い込み⑥「老後は2,000万円が必要」または「2,000万円もいらない」

2019年に金融庁のレポートが話題になって以来、「老後2,000万円問題」という言葉が定着した。

でも、2,000万円という数字は「夫婦2人、夫が会社員で厚生年金あり、持ち家あり、平均的な生活費」という前提で計算されたものだ。

フリーランスや個人事業主なら、厚生年金がない分、不足額はもっと大きくなる可能性がある。一方で、生活費が低ければ2,000万円もいらないかもしれない。

「2,000万円必要」も「2,000万円もいらない」も、あなたの数字じゃない。大事なのは、自分の年金見込み額・生活費・現在の資産から、自分の不足額を出すことだ。


思い込み⑦「収入さえ増えれば、お金の不安はなくなる」

「もっと稼げるようになったら、ちゃんと貯めよう」という言葉をよく聞く。

でも、稼いでいる額が増えても手元に残らない人は多い。なぜかというと、使う額も一緒に増えているからだ。外食が増え、付き合いが増え、「これくらいは仕事に必要」という出費が増える。気づけば、収入は3年前より増えているのに、貯金はほとんど変わっていない。

フリーランスや個人事業主でよく見るパターンがある。売上が増えた年に設備投資や交際費が膨らみ、翌年収入が落ちたとき、手元にほとんど残っていない。

収入が増えたタイミングで「増えた分をどう使うか」を先に決めていない限り、支出は収入に追いついてくる。不安がなくなるのは、収入が増えたときではなく、使い方のルールを決めたときだ。


思い込み⑧「お金に困ってから相談すればいい」

これは思い込みというより、「相談する習慣がない」ということかもしれない。

病気で例えると、症状が出てから病院に行くのか、健康診断で早めに見つけるのかの違いだ。お金も同じで、困ってからでは選択肢が減っていることが多い。

「まだ大丈夫」「自分で調べればわかる」という気持ちはわかる。でも大きな意思決定の前——転職、独立、家の購入、保険の見直し——そのタイミングで一度確認するだけで、後悔が減ることが多い。

お金の相談は、困った人がするものじゃない。判断の精度を上げるために使うものだ。


思い込み⑨「現金があるなら、ローンは繰り上げ返済するほど得」

「借金は早く返すほど良い」という感覚は根強い。気持ちはよくわかる。

ただ、これが正しいかどうかはローンの金利による。住宅ローンのように超低金利のものは、繰り上げ返済で節約できる利息より、その資金を運用・手元に持っておく価値が上回ることがある。カーローンや事業用借入も同様で、金利が低ければ「現金を持ちながら返済する」選択肢が合理的なケースがある。

特に個人事業主やフリーランスに多いのが、手元現金を繰り上げ返済に充てた後、収入が落ちたり急な出費が重なったりして、資金繰りが詰まるパターンだ。会社員と違い収入が不安定な人ほど、手元にすぐ使えるお金を厚く保つことが重要になる。

「現金があるなら早く返す」は、金利が高い借金には正しい。でも一律に当てはめると、かえって選択肢を狭めることがある。


思い込み⑩「投資は余裕資金ができてからやるもの」

「余裕ができたら始めよう」と言い続けて、10年経ったという人は多い。

余裕資金というのは、待っていてもなかなかできない。生活費が上がり、子どもの費用が増え、何かと出ていく。

もちろん、生活費3〜6ヶ月分の緊急予備資金もない状態で投資を始めるのは危険だ。でもそれが確保できているなら、「余裕ができたら」を待つのは、時間を無駄にしている。

投資の最大の武器は**時間(複利)**だ。早く始めるほど有利で、遅く始めるほど不利になる。「いつか始めよう」は、毎年コストがかかっている。


思い込み⑪「投資=ギャンブル」

「投資はギャンブルみたいなものでしょ」という人は多い。気持ちはわかる。株価が上がったり下がったりする様子は、確かに博打に見える。

でも、ギャンブルと投資には決定的な違いがある。ギャンブルは参加者の間でお金が移動するだけで、全体の総額は増えない。投資は企業の活動や経済成長に資金を出すことで、全体のパイが大きくなる可能性がある。長期で見れば、世界経済は成長してきた。その成長の恩恵を受けるのが投資の本質だ。

もちろん個別株の短期売買はギャンブルに近い側面がある。でも長期の積立投資とギャンブルを同列に語るのは正確ではない。

「投資=ギャンブル」という思い込みは、本来使えた手段を最初から閉じてしまう。その結果、何もしないまま時間だけが過ぎていく。


思い込み⑫「お金持ちになれるのは、特別な才能がある人だけ」

正直に言うと、これは「完全な思い込み」とは言い切れない。

お金が増えていく人には共通点がある。自分の時間を切り売りするだけでなく、お金や仕組みに働いてもらう構造を持っている。積立投資でも、事業の仕組みでも、かたちは何でもいい。「自分が動いた分だけ」という構造から、少しでも抜け出している。そしてお金の使い方も違う。節約に必死なわけではなく、還ってくるものにはかける。消えるお金ではなく、回るお金の使い方をしている。

ただ、「じゃあ仕組みを作ればいい」と言うのは簡単で、実行するのは難しい。仕組み化できる人はある意味で特別だ、という見方は、あながち間違っていない。全員が仕組み化できたら、社会が回らなくなるという話もある。

それでもこの思い込みを取り上げたのは、「特別な人の話だから自分には関係ない」と最初から考えるのをやめてしまうのが、一番もったいないからだ。

仕組みを完全に作れなくてもいい。でも、お金に少しでも働いてもらう意識を持つかどうかで、10年後は確実に違ってくる。iDeCoやNISAの積立は、その入口の一つだ。


最後に

12個並べてみて、気づくことがある。

これらの思い込みは、誰かに意図的に植え付けられたものもあるし、社会の空気の中でいつの間にか身についたものもある。どちらにしても、「なんとなくそう思っていた」という状態が一番危ない

思い込みに気づくだけで、判断が変わる。全部を一気に解決しなくていい。

まず、「自分はどれに当てはまるか」を確認するところから始めてほしい。