あなたのビジネスは本当に儲かっていますか?
サービス業を営む皆さん、こんにちは。お店で一番人気のメニュー、あるいは一番高価なメニューは、もちろん一番「儲かる」メニューだと思っていませんか?実は、その考えは危険かもしれません。お客様にたくさん選ばれるメニューが、必ずしもお店の利益に貢献しているとは限らないのです。
この記事では、具体的な数字を使いながら、一見複雑に見えるコスト計算をステップ・バイ・ステップで解き明かしていきます。この記事を読み終える頃には、あなたはメニューごとの「本当のコスト」と「本当の利益」を見抜く力を手に入れているはずです。
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それでは、具体的なメニューの計算に入る前に、まずはお店の「全体」の運営コストから見ていきましょう。
1. ビジネスの全体像を把握する:総コストと稼働時間
どんなビジネスでも、まずは全体像を数字で捉えることが基本です。ここでは、あるサービス店の例を見てみましょう。美容室やネイルやマッサージ等のサロンを思い浮かべてみてください。
- 毎月の総費用: 2,400,000円
- 1ヶ月の総稼働時間: 12,000分
- 座席数: 3席
この3つの数字から、お店の基本的なコスト構造が見えてきます。まず、お店を1分間動かすのにいくらかかっているかを計算します。総稼働時間は、お店を開いてお客さん対応が可能な時間と考えてください。
2,400,000円(総費用) ÷ 12,000分(総稼働時間) = 200円
このお店は、1分あたり200円のコストがかかっていることがわかります。
次に、このコストを座席数で割ってみましょう。これにより、1つの席を1分間維持するために必要なコストがざっくりと計算できます。
200円(1分あたりの費用) ÷ 3席 = 約67円
つまり、1席あたり1分間に約67円の費用がかかっている、ということです。これが、私たちが最初に使う「ざっくりとした共通コスト」になります。
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さて、この「席あたり分費用:67円」という共通のコストを使って、各メニューがどれくらいの利益を出しているように見えるか、最初の分析をしてみましょう。
2. 見せかけの利益:単純計算で見るメニュー別収支
ここでは、3つのメニュー(A, B, C)を例に、先ほど計算した「共通コスト」を使って収支を計算してみます。結果は以下の表のようになりました。
| メニュー名 | 1分あたりの売上 | 1席あたり分費用(共通) | 1分あたりの利益 |
| メニューA | 78円 | 67円 | 11円 |
| メニューB | 60円 | 67円 | -7円 |
| メニューC | 67円 | 67円 | 0円 |
このテーブルだけを見ると、どうでしょうか? 「メニューAが最も効率よく利益を上げていて、メニューBは赤字。メニューCはトントンだな」という結論になりそうです。
しかし、これが本当にビジネスの正しい姿を映しているのでしょうか?
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答えは「ノー」です。「すべてのメニューでコストが同じ」という考え方は、現実的ではありません。なぜなら、メニューごとに使う資源や手間(=人件費)は全く違うからです。では、もっと正確にコストを計算するために、費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
3. コストの解剖:費用はどのように分けられるか?
お店の総費用240万円は、様々な費用の集合体です。その内訳は以下のようになっています。
- 家賃: 300,000円 (場所を借りるための固定費)
- 人件費: 1,500,000円 (スタッフに支払う給与)
- 水道光熱費: 150,000円 (水、電気、ガスなどの費用)
- 減価償却費: 120,000円 (設備などの価値の減少分を費用化したもの)
- 消耗品費: 180,000円 (サービス提供に使う使い捨ての備品など)
- 広告宣伝費: 100,000円 (集客のための費用)
- その他: 50,000円 (上記以外の雑費)
より正確なコスト計算を行うには、これらの費用を各メニューに**「配賦(はいふ)」**する必要があります。
配賦(はいふ)とは?
会社全体で発生した共通の費用を、ある「ものさし(基準)」に基づいて、各部門や製品(今回はメニュー)に割り振る作業のことです。これにより、「どのメニューが、どれだけ費用を使ったか」を明らかにします。
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それでは、実際にこれらの費用をメニューごとに配賦してみましょう。費用ごとに、最も公平だと思われる基準で分けていくのがポイントです。
4. より現実に近いコスト計算:メニューへの費用配賦
費用をメニューごとに割り振る方法は、費用の性質によって異なります。ここでは大きく3つのカテゴリーに分けて見ていきましょう。
4.1. 均等に分ける費用(家賃、広告費など)
家賃や設備の減価償却費、お店全体の広告宣伝費などは、特定のメニューだけに紐づけるのが難しい費用です。こうした費用は、3つのメニュー(または3つの座席)で均等に分けるのが合理的です。
4.2. 使用割合で分ける費用(水道光熱費、消耗品費)
一方で、メニューによって使う資源の量が明らかに違う費用もあります。例えば、水をたくさん使うメニュー、高価な消耗品を使うメニューなどです。これらの費用は、実際の使用割合に応じて配賦するのが公平です。
| 費用項目 | メニューAへの配賦額 | メニューBへの配賦額 | メニューCへの配賦額 | 配賦の根拠 |
| 水道光熱費 | 33,500円 | 42,250円 | 74,250円 | 使用割合(水や電気の使用量) |
| 消耗品費 | 15,000円 | 75,000円 | 90,000円 | 使用割合(専用の消耗品など) |
この表から、メニューCは特に水道光熱費と消耗品費を多く使っていることがわかります。
4.3. 最も重要な配賦:人件費
サービス業において、人件費は最も大きなコストであり、これをいかに正確に配賦するかが利益計算の鍵を握ります。最も公平な「ものさし」は、「各メニューの提供にどれだけの時間をかけたか」です。
総額1,500,000円の人件費を、各メニューの対応にかかった合計時間の割合で配賦した結果、以下のようになりました。
- メニューA: 725,815円
- メニューB: 459,733円
- メニューC: 314,453円
メニューAは、最も多くの時間を要するため、人件費も一番多く負担することになります。
全費用の配賦結果まとめ
すべての費用を配賦した結果、各メニューが負担すべき月間の総費用が明らかになりました。
| 項目 | メニューA | メニューB | メニューC |
| 合計配賦費用 | 964,315円 | 766,983円 | 668,703円 |
興味深いことに、メニューCは月間の合計コストだけ見れば最も低いことがわかります。しかし、これが利益にどう結びつくのでしょうか。
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すべての費用を配賦し、メニューごとの新しいコストが算出できました。この結果を使って、もう一度メニューごとの利益を計算し直してみましょう。果たして、どんな真実が見えてくるでしょうか。
5. 明らかになった真実:本当のメニュー別利益
ステップ4で計算した新しい費用配賦の結果を基に、最終的な比較表を作成しました。単純計算の結果と並べて見てみましょう。その違いは衝撃的です。
| 項目 | メニューA | メニューB | メニューC |
| 1分あたりの売上 | 78円 | 60円 | 67円 |
| 【新しい】1分あたりの費用 | 47円 | 82円 | 111円 |
| 【新しい】1分あたりの利益 | 31円 | -22円 | -44円 |
| (参考:単純計算での利益) | (11円) | (-7円) | (0円) |
この最終結果から、ビジネスの核心を突く洞察が得られます。
- メニューBの赤字の深刻化 単純計算では-7円の赤字に見えましたが、実際には消耗品や水道光熱費を多く使うため、-22円という大幅な赤字メニューだったことが判明しました。
- メニューCの衝撃的な赤字 利益ゼロに見えたメニューCは、実は1分あたり-44円という、お店で最も収益性の低いメニューでした。その理由は、単純なコストの総額ではありません。 前のセクションで見たように、メニューCは月間の合計コスト(約67万円)や人件費(約31万円)は最も低かったのです。しかし、問題はその「時間効率の悪さ」にありました。メニューCは提供時間が長く、顧客数も少ないため、そのコスト(水道光熱費や消耗品費は高い)が非常に短い稼働時間(月6,000分)に集中してしまいます。その結果、1分あたりの費用が111円にまで跳ね上がり、提供すればするほど損失が拡大する構造になっていたのです。
一方で、メニューAは当初の予想(11円の利益)をはるかに上回る31円の利益を生み出す、真の優良メニューであることが明らかになりました。
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この衝撃的な結果から、私たちは何を学び、次の一歩をどう踏み出せば良いのでしょうか。最後に、今回の分析の要点をまとめましょう。
6. まとめ:数字を味方につけてビジネスを成長させる
今回の解説から私たちが学べる、最も重要な教訓は以下の3つです。
- 平均のワナに注意 すべてのコストを「平均」や「ざっくり」で捉えると、ビジネスの本当の姿を見誤ります。一見便利に見える平均値は、重要な個別の事実を隠してしまう危険性があります。
- コスト配賦の重要性 手間(人件費)や資源(消耗品など)のかかり具合に応じてコストを正しく配賦することで初めて、メニューごとの真の収益性が見えてきます。この一手間が、ビジネスの運命を分けるのです。
- データに基づく意思決定 感覚や人気だけでなく、こうした計算結果に基づいてこそ、「どのメニューに力を入れるべきか」「価格や内容、提供時間を見直すべきメニューはどれか」といった、的確な経営判断が可能になります。
コスト計算は、決して難しい会計学の話ではありません。自分のビジネスをより深く理解し、成長へと導くための強力なツールです。ぜひ、今日の学びをあなたのビジネスに活かしてみてください。


