企業の財務分析<中小法人の資金計画➂>

今回のファイナシャルプランナー講座は、中小企業の資金計画の3回目「財務分析」です。

財務分析は、自社と同業他社、あるいは自社の過去と現在を比較して行います。
比較をすることで、強みや弱味、課題が見えてきます。
課題が見えたら、どう解決していくのかを考え、そして実行にうつします。
この流れを企業の成長につなげて始めて財務分析が意味のあるものになります。

また、投資家や金融機関も、投資(融資)判断を行うために財務分析を行います。

財務分析の計算方法を覚えるだけでなく、誰が何のために分析を必要とするのかを考えてみることが理解への近道です。
——

貸借対照表と損益計算書

財務分析の前に、分析に使用する貸借対照表、損益計算書のおさらいです。
財務分析に必要な貸借対照表・バランスシートの項目
貸借対照表は、資産の部、負債の部、純資産の部で構成されています。
資産と負債には、現金化のしやすさ・支払期限1年以内かどうかで、流動資産・流動負債と固定資産・固定負債に分けられます。


損益計算書は、次のように売上高から純利益までを計算したものです。
売上高 - 売上原価 = 売上高総利益
売上高総利益 - 販売費・一般管理費 = 営業利益
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益
経常利益 + 特別利益 + 特別費用 = 税引前当期純利益
税引前当期純利益 - 法人税等 = 当期純利益

この財務諸表を使用して、財務分析を行っていきます。
財務分析には以下5つの観点があります。

  • 収益性分析
  • 安全性分析
  • 活動性分析
  • 生産性分析
  • 成長性分析

収益性分析

損益計算書・貸借対照表のデータを用いて企業の収益性を分析します。ROEやROAが代表的な指標で、主に投資家の判断に使われます。

➀自己資本利益率(ROE)

自己資本でどれだけの利益を生み出したのかを測ります。
ROE は、Return on Equityの略です。

自己資本利益率(ROE)= 経常利益 ÷ 自己資本 × 100

ROAは、Return On Assets、総資産利益率となります。

➁総資本経常利益率

総資本経常利益率は、総資本(総資産)に対する経常利益率のことです。突発的な事象の結果である特別利益・特別損失を含まない「経常利益」を使うことで、通常時の収益性を測ることができます。数字が大きいほど収益性が高いということです。

総資本経常利益率 = 経常利益 ÷ 総資本 × 100

経営指標としては、売上高総利益率(粗利率)や売上高経常利益率も重要です。中小企業庁「平成30年中小企業実態基本調査 」によると、中小企業全業種の売上高経常利益率は、3.70です。
どの指標も基準となる数字、全業種の平均や同業種の平均を1つ覚えておくと、何かと使えます。

安全性分析

貸借対照表を用いて、資産(資本)の調達構造を分析し長期・短期の支払い能力を評価します。自己資本比率、負債比率、流動比率、当座比率などがあります。

➀流動比率

短期(1年以内)の支払能力を測る指標です。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

さらに短期的な支払能力を測る指標として、「当座比率」があります。

当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座資産は、流動資産から棚卸資産(商品・製品)などを除いた「より換金しやすい資産」です。

➁自己資本比率

他人資本(借入)に頼らずに経営できているかを測る指標です。自己資本比率が高いと経営・財務が健全とみられます。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産(総資本) × 100

活動性分析

損益計算書・貸借対照表双方を用いて、売上高や利益を上げるために資産(資本)をいかに効率的に活用できているかを分析します。総資本回転率、固定資産回転率などがあります。

➀総資本回転率

資本が効率よく売上を生み出しているかを測る指標です。中小企業の全業種平均は、1.12です。

総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資産(総資本)× 100

➁固定資産回転率

設備投資が効果を上げているかを測る指標です。

総資本回転率 = 売上高 ÷ 固定資産 × 100

生産性分析

企業が生み出した付加価値を評価します。主に労働生産性、労働分配率などです。労働生産性は、経済産業省などお役所がこの向上を企業に求めてきます。高齢化と人口減少が今後も続くので、1人当たりの生産性を上げないと、今の経済水準を維持できなくなるからです。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 平均従業員数
付加価値額
= 経常利益 + 人件費 + 地代家賃 + 減価償却費 + 租税公課 + 支払利息・割引料

成長性分析

業績や資産規模、従業員数を用いて、企業の成長の度合いを測る分析方法です。
複数年度の損益計算書を比較して売上高や利益の伸び率(変化)を分析します。主な指標は、売上高増加率です。

売上高増加率

前年売上と比較したときの増加率です。数年間の推移をみることで成長性を測ります。

売上高増加率 = ( 当期売上高 - 前期売上高 ) ÷ 前期売上高

財務分析の手法を解説しました。
財務分析の計算をするだけでは分析になっておらず、同業他社比較、過去と現在の比較をして分析になります。

上場企業の財務データはホームページや会社四季報、ネット証券会社などで入手できます。あなた自身や身近な人の勤務先と比べたり、1つの企業で過去と比べたりして、実際に財務分析してみてください。

<関連記事>

家計でも企業の財務分析のような分析ができるexcelシート

企業の財務分析を家計でもできないかと思い、家計力分析ができるシートを作成しました。excelシートを無料でも配布しています。

戻る 中小企業のキャッシュフロー計算書と資金繰り表<中小法人の資金計画➁>

FP講座TOPへ戻る

進む 中小企業の資金調達<中小企業の資金計画➃>

スポンサードリンク




スポンサードリンク
1




フォローする

スポンサードリンク
1