保険業法と保険法の違い
「保険業法と保険法の違いを知る」が今回のテーマです。
保険業法と保険法の違いは次の通りです。
保険法:契約当事者間における契約ルールについて定めるもの
保険業法:保険会社に対する監督(免許の内容,業務の内容の規制,罰則等)について定めるもの
出典:法務省HP(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00114.html)(2020年10月7日確認)
保険法は、契約のルール
保険業法は、契約者を守るために保険会社に守らせるルールです。
保険会社がルールを守って経営・運営しているのかは、金融庁が監督しています。
保険法
保険法を詳しく見ていきましょう。保険法は保険契約に関するルールです。
いつ施行され、いつの契約から適用になる?
保険法は、平成22年(2010年)4月1日施行です。(商法の保険契約に関する規定がベースだが、実質100年近く改正されていなかった)
原則、施行日以降に結ばれた契約が対象となりますが、保険金の支払時期,責任保険契約における先取特権等、一部規定は施行日前に締結された保険契約にも適用されます。
保険法のポイント
◆共済契約にも適用されます
◆保険契約者等の保護に関する主な規定は次のようなものがあります。
➀契約締結時の告知
- 告知は、保険者(保険会社)からの質問に答えれば足りる
- 保険募集人による告知妨害等があった場合,原則として保険者は告知義務違反を理由に契約を解除することができない
➁保険金の支払時期
- 保険金支払に必要な調査のための合理的な期間経過後は,保険者は遅滞の責任を負うこととしています。合理的な期間経過後は、約款で定められていることが一般的です。
生命保険会社:45日(最長180日)、損害保険会社:30日
★著者が調べた限りの一般的な【支払までの期間】です。各保険の約款を確認してください。
➂法律よりも保険契約者等に不利な約款は無効(片面的強行規定)。
➃保険契約者と被保険者が異なる死亡保険契約は、被保険者の同意が必要(同意がないと無効)
➄保険金受取人の変更
- 保険契約者は保険金受取人を変更できる
- 遺言で保険金受取人変更が可能
- 死亡保険の保険金受取人変更は、被保険者の同意が必要
⑥時効
保険金受取人が保険金を請求する権利:3年
保険会社が保険料を請求する権利:1年
保険業法
保険会社を監督するための法律ですが、その目的は、消費者(保険契約者)保護です。
保険業法のポイント
◆契約者保護が目的
保険契約者を守るために、会社や保険募集人が守らなければならないルール。
◆共済契約には適用されない。共済契約は、各協同組合法が適用される。
◆保険募集に関する禁止行為の一部(保険業法300条、保険業法施行規則234条)
➀虚偽の説明(「保険契約すると融資に通る」と言って保険を勧める)
➁重要な事項の不説明
➂告知義務違反をすすめる(「病気になったことは黙ってたらわかりませんよ」、と言って告知させる)
➃不適正な乗り換え
➄特別の利益の提供(割引やキャッシュバックなどの利益提供や利益提供の約束)
⑥他の契約との比較において誤解を招く表示・説明
⑦配当金や変額保険の保険金など不確実な事項の断定や確実と誤解させる表示や説明
などが禁止事項として定められている。
◆保険募集の禁止事項だけでなく、情報提供義務や意向把握義務など、積極的な顧客対応を求める義務が定められている。
意向把握義務とは、お客さんの意向と契約内容があっているかどうかを確認しないといけないこと。保険募集人が勝手に決めた内容だったり、無理やり決めた内容だったりでないかを確認する。
◆複数の保険会社の保険商品を販売している代理店(乗合代理店)が、取扱商品のうち特定の商品を推奨する場合、原則、商品内容・特性に加えて、商品をどのように選んだか、根拠を説明しなければならない。
数年前、保険の乗合代理店(ほけんの窓口など)は、たくさんの商品の中から最適なものを選べるとうたいながら、実は保険会社から得られる販売手数料の高いものばかりを紹介していることが問題になっていました。
代理店も事業なので、利益を求めるのは当然なわけで、手数料高い商品を勧めるのは悪いことではないと思います。ダメなのは、まるで公正・中立かのように見せていることです。消費者としては、結果的に最良の保険を見つけたにしても、なんだか騙された気がするわけです。
FPでも公正・中立を掲げながら特定の保険を売っている人が多いのですが(でないと成り立たない)、正直にこの保険商品を売って儲けていますと言った方が好感が持てる気がします(個人的な意見です)。
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